Produced by RESCHO

RESCHOは精神科病院・クリニック向け電子カルテAlpha / Warokuのメーカーです

検索

2021年7月24日放送分「APD:聴覚情報処理障害」

放送日:2021年7月24日(土)

パーソナリティ
一文字 弥太郎さん

アシスタント
岡 佳奈さん

レスコ出演者
代表取締役 藤川 佳應

radio theme
APD:聴覚情報処理障害
APD:聴覚情報処理障害とは

「APD」というのは具体的にどういうことですか?

聴力自体は全く問題が無いのですが、騒音のある賑やかな場所で誰かの話をきちんと聞くことができない、聞こえづらい、そういった障害ですね。

聴覚は問題無いのですか?

聴力検査の時は一切問題が出ないのですが、学校の授業を受けている時、先生の話している内容が聞き取れない、聞き取りづらいそうです。

脳と関係した問題なのですか?

そうみたいですね。脳で言葉を処理する部分に何らかの障害があって理解ができなくなるみたいです。

ちょっとメールを紹介します。
「山口の者」という方からメールを頂きました。
「APDについて話されるという予告があったので筆を執りました。幼い頃からつい2年前のカウンセリングに至るまで、長年正確な診断はできないと言われてきました。おそらく私も聴覚情報処理障害を持っている者です。
幼い頃は楽器の音ははっきり聞こえ、複雑な和音も聞き分けられていたのでむしろ耳が良いと自覚していたけど、大人になるにつれ、たとえば踏切の音や、自動車が走る時に出すいろんな音など、普通の人ならこれらは雑音として音を処理して人の話を聞くわけですが、それが私はできません。集中しろと何度も怒られてきて、人の声をピックアップしようと意識しても、うっすら何か声がしている感じ。だから文章中の単語が飛ばし飛ばし聞こえる、把握できる程度なので、結局話している内容が全く把握できない事もありました。でも顔は何となく音のする方向に向けているので、「ワレは聞こえんのか!」と余計に怒られた事が何度もあります。何度も説明を試みましたが、その分言い訳していると何度も何十年も言われてきました。
でも最近ようやくこういう事が言われてきて、ほんの少し楽に生きていられるような気がしています。」
貴重なメールをありがとうございます。
そういう事ですか?

まさにそういう事ですね。今頂いたメールにもあるのですが、最近見つかったものなので、潜在的には日本国内で240万人ぐらいいるのではないかと言われています。

分かったのはいつ頃ですか?

アメリカの言語聴覚学会がAPDを定義して発表したのが2005年です。

まだそんなものなのですか。

そうなんです。2018年にNHKでAPDが取り上げられたこともあり、皆さんの認知が進みつつある障害ですね。

専門医もまだ無いという感じですか。

本当に少ないそうです。

ではきっと苦労されていた方、沢山いらっしゃいますね。

今ラジオを聞いていらっしゃって、「私も」という方もいらっしゃるかもしれないですね。

高次脳機能障害をこちらのコーナーでご紹介した事があると思うのですが、その高次脳機能障害によって聞き取りづらいなどの影響があるという研究を進めていったところ、どうも高次脳機能障害のように脳に損傷が与えられたわけではないのに聞き取りづらいというものがあって、それで研究が始められたという事になりますね。

頂いたメールにもあったように、雑音などがあるとその人の話が聞き取れないという事ですね。

はい。早口だったり、小声だと聞き取りづらいとか。

耳が聞こえづらい方は補聴器をつけるとかそういう方法がありますけど、このAPDの方はそういうものではないですものね。

ご本人にはどうしようもない障害なので、今のところ解決策は、その方が聞きやすい環境を周りが作っていくしかないですね。

だから「ワレは聞こえんのか」と怒るのではなくサポートしようと思ったら、どんな事を気をつけたら良いですかね?

たとえば授業中の場合は、周りの生徒さんたちが静かに授業を受ける事が必要になりますし、誰かが喋る時は挙手をして、誰が今何を喋るかという事を、障害を持った方が認識できるようにするとか、または少し近いところで話すとか、そういう環境作りですよね。ご本人の聞き方のトレーニングもあるようですが、そうは言ってもやはり基本的には周りの環境整備が中心になりますよね。

お子さんだとより、自分で認識できないじゃないですか。
聞こえづらくて、先生に怒られてばかりになったら、幼少期に心の傷にも繋がりそうな気がして。

そうですよね。親御さんが参観日に行かれて、先生が喋っている時によそを向いているので「先生喋っているのに何でよそを向いていたの?」と聞いたら、「先生何も喋っていなかった」という事で見つかったりとか。
そんな事もあるみたいですね。発見が本当に難しいですよね。

APDという事だけでも私たちが覚えておかないと。もしかしたら自分もそうかもしれない可能性もあるからね。

いろんな原因が絡み合っていて、1つはADHDだとか、発達障害だとか、自閉症関係だとか、それも100%ADHDとかではなく原因が輻輳して起きている場合もあるという事ですね。

APDへの理解と支援

今APDは、どんどん治療法など確立されている状況なのですか?

今のところ全く治療法らしいものはないので、まずは早く発見をして、ご自身が理解される事と、周りの方がその方の障害を理解して、障害を持った方が生きやすい環境整備をしていくという事ですね。

「私はAPDなんで」と言えるような世の中になった方がみんな楽に生きられるという事ですよね。 これ専門医とかできると良いですね。

そうですね。専門医と呼ばれている方々が少ないので。先日ある医療機関の方ともお話をしましたが、本当にAPDを診断できる、そもそも診断方法もまだ確立されたものが無いので、そこの知見を持ったドクターに出会って診察してもらう事自体が難しくて、普通に3か月4か月待ちという事ですが、最初からAPDと思って来られるのではなくて、いろんな障害の可能性を想像しながら、我々はADHDとかAPD、違いがよく分かりませんから、そもそもどこに最初に受診相談に行くか分からないですよね。

確かに。

せっかく3、4か月待ってAPDだと思って受診されてもAPDじゃないよとか。その時間がまたロスになってしまったり。
もっと言うとAPDを見る事ができる先生方のリソースが少ないので、結局現場が今すごく混乱しているそうで。まして潜在的に多いという事なので。

レスコさんでは色々ポータルサイトなどを作っていますが、いろんな声が集められるようなればよいですよね。

本当にそうですね。診る事ができる先生が限られていますから、たとえば以前ご紹介したAIチャットボットやAI問診などをもっと利活用して、少なくとも入口だけでも整備されれば随分違うと思います。